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<学生団体>5月のおすすめ本

1)『海辺のエトランゼ』 紀伊カンナ 著
▶ISBN:9784396783488
▶署名:海辺のエトランゼ
▶著者:紀伊カンナ
▶出版社:祥伝社
▶本体価格:620円

BLと聞いて皆さんはどんな話を思い浮かべるでしょうか。
 性描写が激しい本、どこか現実離れしている本、とそんなイメージがある方もいるかもしれません。それはそれでいいのですが、この本は完全に違和感のないただの男性二人の恋模様を描いています。
 両親を亡くし天涯孤独な実央と、恋に奥手なゲイの駿。二人はある日突然出会います。奥手な駿が実央に一目ぼれ、のちにその気持ちに気づいた実央が...
 少し押され気味の駿と、好き好きと気持ちを伝えまくる実央の二人を見ているとこっちが嬉しい気持ちになるそんな孫を見ているおばあちゃんの気持ちになれる本です。
 離れ離れになってもお互いの気持ちは変わらずに、そしてこれから先の苦難を一緒に乗り越えられる二人に皆さんも会ってみてください。
 よく本屋にあったり、親愛なる腐女子・腐男子の皆様がよく読んでいらっしゃるような「濃厚」なBLとはまた違う「心が洗われるような」BLを読みませんか?
 皆さんにとっての普通とはまた違う、幸せなごく平凡な二人を見守る会に一緒に入りましょう!


【評:大谷 真寛】

(2)『ゲイの誕生:同性愛者が歩んだ歴史』 匠雅音 著
▶ISBN:9784779118951
▶署名:ゲイの誕生同性愛者が歩んだ歴史
▶著者:匠雅音
▶出版社:彩流社
▶本体価格:2,500円

 皆さんは「ゲイ」と「ホモ」の違いを知っていますか?私は本書を読むまで「ゲイ」は同性愛者、特に男性同性愛者を指す言葉、「ホモ」は同性愛者の蔑称だと思っていました。しかし、本書ではゲイとホモは異なる概念だと筆者は語っています。ホモは年齢差を伴う対等ではない関係、つまり成人男性と青少年との同性愛のことを指すのであるのに対し、ゲイは年齢差を伴わない対等な関係、つまり成人男性同士の同性愛のことを指すと筆者は主張しているのです。また、前近代までは同性愛の概念すら存在せず近代科学の誕生や市民民革命などによって、人々の観念が変化していく過程で上記の単語が誕生したことについても筆者は注目しています。歴史的観点から、上記の言葉について考えたことがある人は少ないのではないのでしうか?
本書の言及する範囲は、ゲイという単語が誕生するまでの過程から現在に至るまでの歴史以外に、ゲイに対する世間の偏見にまで及びます。そのため「日頃から何気なく耳にするゲイとホモってどのような経緯で生まれたのかな?」、「ゲイの人ってどんな人なんだろう?」のような様々な疑問を解決してくれる本になっています。ぜひ一度お手に取ってご覧ください


【評:木glee山】

(3)『BL進化論』 溝口彰子 著
▶ISBN:9784778314415
▶署名:BL進化論
▶著者:溝口彰子
▶出版社:太田出版
▶本体価格:2,700円

BLなんて腐女子のものだ。
そう思っているあなたにこの本を送りたい。
BLという作品群がいまこの社会にもはやマイノリティではなくメジャーな作品として君臨していることに世間の皆さんは気づきたくないのかもしれない。
でも、目を背けないで!BLは今や日本の一大ポピュラージャンルなのである。
もちろんBLは初め女性のもので、女性がその社会的抑圧を男性キャラクターに仮託ししょうかするものであった。しかし現在は女性の社会進出も進み始め(まだ完ぺきとは言えないが)最初に述べた理由だけがBLは普及の理由なのであれば今頃BLが衰退していてもおかしくはない。
ではどうしてBLが今もしかも日本のトップカルチャーとしてあるのか。知りたくはないだろうか?
BLをただの変態マンガだと思っていないだろうか。でも深い視点でBLを見れば新たな何かが見えてくるかもしれない。
 「BLを通して社会を見る」一昔前はばかげたセリフだったのかもしれない。しかし、今はどうなのだろうか。
 すべてのBL愛好家とそうじゃない人におすすめする新たなるBL解剖本、あなたもぜひ。


【評:大谷 真寛】

(4)『82年生まれ、キムジヨン』 チョ・ナムジュ 斎藤真理子 著
▶ISBN:9784480832115
▶署名:82年生まれ、キムジヨン
▶著者:チョ・ナムジュ 斎藤真理子
▶出版社:筑摩書房
▶本体価格:1,500円

ある人(達)が感じた経験―苦しみや怒り、悲しみ、喜び―は、結局のところその人(達)だけのもので、その経験を他の人(達)が分かることはできないと私は思うし、「あなたが感じていること、すごく良く分かる」などと軽々に言うことはとてもおこがましいことだと思う。しかし、だからといって「あなた(達)の感じていることなんて他人の自分(達)には絶対分からないから」という態度をとってしまうことにはもっと問題があると思う。
 誰かの経験と向き合う時、大切なのは、「その人(達)の経験はその人(達)だけのもので、自分(達)には分からない」と理解した上で、それでも向き合って、分かろうとし続けることではないのだろうか(言い尽くされていることかもしれませんが…)。それはとても難しいことかもしれないが、その姿勢でこそ、(気持ちが分かるなどということとは程遠いかもしれないけれど)他人(達)の経験のより近くまで近づいていくことができるのではないだろうか。
 「82年生まれ、キム・ジヨン」は韓国を舞台にした、小説とノンフィクションの中間ともいえるフェミニズム文学である。この本を読む方には、この本で描かれるキム・ジヨン達の「経験」を「自分達のもの」と感じて心動かされる人もいれば、「他人達のもの」と感じる人もいるだろう。この本を読んだ全ての人、特に後者だと感じた人に、この本で出合った「他人達の経験」について、そして、普段の生活で出合う「他人(達)の経験」について読了後も考え続けて頂ければ、幸いだ。


【評:長砂 太賀】

(5)『性表現規制の文化史』 白田秀彰 著
▶ISBN:9784750515182
▶署名:性表現規制の文化史
▶著者:白田秀彰
▶出版社:亜紀書房
▶本体価格:1,800円

数年前、ふとこんなニュースを目にした。とある政治家が書店から「えっちな漫画」を撤去しようとしているらしい。露骨な性表現だけでなく、それに少しでも准ずるもの全てだ。どうやらお孫さんがいるらしく、「えっちな表現」は全てその子に悪影響を及ぼすと考えてのことだった。そういうおじいさんいるよね?なんて感じた人も少ないはず。もしかしたらこの書評を手に取った人の中には、親や先生から「えっちな」本やビデオを取り上げられたことのある人もいるのかもしれない。しかしこうは思わないだろうか。「どこからが『えっち』なんですか!」と。それは例えるなら遠足の前には必ず聞いていたおやつはバナナに入るんですか!と同じである。本書は日本人が「えっちなのはいけない」と反射的に感じてしまう理由を、歴史・宗教・婚姻制度・相続などあらゆる視点から紐解いていく1冊である。どこか躊躇してしまう「えっちな表現」。この本を読み終わる頃にはこれまでにないくらい、ロジカルに、体系的に、そして理性的にあなたの日常の周りにある性を紐解くことができるようになっているだろう。

【評:中西 高大】

▼ 2019年5月の担当学生団体 ▼
GSOU (大阪大学ジェンダーとセクシャリティの多様性を考える会)
2018年4月発足
大阪大学内においていわゆるLGBTの枠にとらわれず、すべてのひとが性の多様性についてオープンに議論し声をあげられる団体を目指し設立。そのためGSOUには「LGBT」だけでなく様々な「性」を持つメンバーが在籍。
現在は講演活動・啓発活動を行いつつ、阪大内でできることを模索中。
講演依頼や相談依頼は随時募集しています。新入部員は絶賛募集中です。
Twitter:@gsd_osakauniv Mail: gsd.osaka.u@gmail.com


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