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<教員>4月のおすすめ本

(1)『君に友だちはいらない』 瀧本哲史 著
▶ISBN:9784062176200
▶書名:君に友だちはいらない
▶著者:瀧本哲史
▶出版社:講談社
▶本体価格:1,700円
衝撃的なタイトルに、思わず「えっ!」と驚きませんでしたか?
エンジェル投資家である著者の瀧本哲史氏は、経済の大きな流れを掴むエキスパート。本書では、グローバル資本主義を勝ち抜くための実践的な戦略を説きます。そこで登場するのが、夢を語り合うだけ・SNSで繋がっているだけの「友だち」なんか要らない、という斬新な視点です。では、一人で戦うことを薦めているのかというと、そうではありません。同じ目標のもとで苦楽をともにする「戦友」や「仲間」こそが必要だ、というのが著者の真意なのです。そうした戦友を集める「仲間づくり」がなぜいま特に重要なのか、仲間づくりに成功して世の中を動かしてきたチーム(秘密結社!)にはどのようなものがあるのか、実際に仲間を集める際に何に気を付ければ良いのか。こうした疑問に的確な答えを出しながら、「武器としてのチーム」を創り出す意義や方法が、様々な視点から明らかにされていきます。本書をヒントに、みなさんも秘密結社を作ってみませんか?

(2)『オリジン上』 ダン・ブラウン 著
▶ISBN:9784041056004
▶書名:オリジン上
▶著者:ダン・ブラウン
▶出版社:KADOKAWA
▶本体価格:720円
「われわれはどこから来たのか」「われわれはどこへ行くのか」という人類最大の謎と、その謎を解き明かした天才科学者の暗殺事件。2つのミステリーを、『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズでお馴染みの主人公、ラングドン教授が追いかけるのですが、なんとその相棒は人工知能!数々のピンチを潜り抜けながら謎に迫っていくスピード感溢れる展開に、思わず一気読みしてしまいました。本書で描かれる、テクノロジーと宗教との緊張関係や、やがて来るかもしれない人類の「未来」はリアリティを感じさせます。そして、ミステリーとしての期待を裏切らない衝撃的なエンディング。これから加速していくことが間違いないAI(人工知能)の進展が社会をどう変えていくのか、人類に革命的なチェンジをもたらすのか。テクノロジーの力を借りてわれわれが向かっているのはユートピアなのかディストピアなのか。この世界の当たり前を疑い、「人とは何か」を改めて考えさせる壮大なスケールの小説です。

(3)『ヴェニスの商人の資本論』 岩井克人 著
▶ISBN:9784480080042
▶書名:ヴェニスの商人の資本論
▶著者:岩井克人
▶出版社:筑摩書房
▶本体価格:950円
著者の岩井克人先生は日本を代表する理論経済学者。現代の経済環境を前提とした狭い市場経済の分析にとどまらず、資本主義の根源的な問題点やその制度の本質が何かを問い続けている独創的な研究者でもあります。僕も学部生時代に彼の講義をいくつか受講しましたが、豊富な学識と独自の視点が混ざり合う刺激的な中身、そしてその内容を岩井先生が本当に楽しそうに語られていた点が強く印象に残っています。本書は、そんな岩井先生が初めて出版されたエッセイ集で、講義に勝るとも劣らない魅力が凝縮された一冊。人類の誇る知性である、シェイクスピアとマルクスを組み合わせたタイトルからしていかにも面白そうですよね(笑)。出世作でもある『不均衡動学の理論』のアイデアや、後に『貨幣論』として結実するお金を巡る思考など、一見するとカタい内容が独特の文体で語られ、目からウロコがぼろぼろ落ちること間違いなし。僕自身、学者の書いた本の中でここまでひき込まれたものは他になく、学部生の頃に読んで大きな衝撃を受けました。阪大の皆さんにも、ぜひこの知的興奮を味わってもらいたいです。

(4)『多数決を疑う』 坂井豊貴 著
▶ISBN:9784004315414
▶書名:多数決を疑う
▶著者:坂井豊貴
▶出版社:岩波書店
▶本体価格:740円
トランプ旋風、ブレグジット、各国で高まる排外主義…。ポピュリズムの台頭が世界中で進行し、民主主義の危機や限界が叫ばれるようになってきました。そもそも、デモクラシーを原語とする民主主義は民主政とも訳され「人民による統治」を意味します。人民すなわち大勢の人びとが統治を行うためには、多様な意思・意見の集約が欠かせません。この集約方法として最もおなじみなのが投票、そして最も使われている投票のルールが多数決です。あまりにもポピュラーなので、多数決以外の投票ルールを知らないという方も多いかもしれません。本書は、この民主主義の当たり前を疑います。多数決を含む様々な投票ルールが紹介され、各ルールにどのような利点・欠点があるのかが、著者が専門とする社会選択理論の視点から分かりやすく整理されているのです。たとえば、「1位:3点、2位:2点、3位:1点」といった具合に選択肢に順位付けをして投票し、総得点で勝者を選ぶ「ボルダルール」。このルールは、1位の得票数しか考慮しない多数決と比べて、票割れに強いなどの望ましい性質を持つことが示されます。本書を読むと、民主主義の危機を嘆く前に、まずは多数決の限界にきちんと目を向けることがいかに大切であるかを痛感します。多数決に変わる、より望ましい意思集約の方法を考えてみることこそ、民主主義を守るための建設的な第一歩ではないでしょうか。

(5)『FACTFULNESS』 ハンス・ロスリング 著 
▶ISBN:9784822289607
▶書名:FACTFULNESS
▶著者:ハンス・ロスリング
▶出版社:日経BP
▶本体価格:1,800円

突然ですが、以下の質問に答えてみて下さい。


【質問】15歳未満の子供は、現在世界に約20億人います。国連の予測によると、2100年に子供の数は約何人になるでしょう?
A:20億人
B:30億人
C:40億人


メディアなどで世界レベルの人口増加問題がしばしば報道されるので、子供の数も当然増えていくと思われた方が多いのではないでしょうか? しかし、正解は今と同じ「A: 20億人」なのです。確かに世界人口自体はしばらく増加傾向が続きますが、それは子供の数が増えるからではなくて、長寿・高齢化に伴って大人が増えていくから。日本で起きているような少子高齢化が、今後は世界レベルで急速に進むことが予測されているのです。本書は、冒頭のような具体的な質問を通じて、「われわれの当たり前がいかに間違っているか」を気付かせてくれる画期的な啓蒙書です。答えに関連する様々な「ファクト」や、著者自身の興味深いエピソードも紹介されます。加えて、「なぜこのような勘違いが生じてしまうのか」という、バイアスが発生しやすい理由も、10のカテゴリー別に解説されているのです。世の中の当たり前を疑うことは大切ですが、本書を通じてまずは自分自身の中にも存在する当たり前を疑ってみてはどうでしょうか?

▼ 2019年4月の担当教員 ▼
安田 洋祐先生
安田 洋祐(やすだ ようすけ)先生プロフィール
経済学研究科准教授 東京大学経済学部卒業後、米国プリンストン大学へ留学しPh.D.を取得。政策研究大学院大学助教授を経て、2014年4月から現職。専門は戦略的な状況を分析するゲーム理論。マスメディアへの出演や、政府での委員活動にも取り組んでいる。関西テレビ「報道ランナー」、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」などにコメンテーターとして出演中。財務省「理論研修」講師、金融庁「金融審議会」専門委員などを務めた。


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